映画「負け犬の美学」2017年フランス ~自分なりの美学へのこだわり~

映画から学ぶ

ボクシングに興味があったわけではありませんが、なんとなく邦題にひかれて鑑賞することにしました。フランス映画で原題は「Sparring」です。美学とは自分の生き方の中で何が美しいと感じることができるかという意味で、人それぞれの価値観を描いた映画と思ったからです。

落ち目の中年ボクサー

40代半ばを迎え盛りをすぎた中年ボクサー、スティーブ。たまに声のかかる試合とレストランのアルバイトで家族をなんとか養っています。ピアノが上手になりたいという娘にピアノをプレゼントしたいと考え、危険を伴う「欧州チャンピオン復帰を目指すタレクのスパーリングパートナー(練習相手)」に志願します。ボロボロになりながらも何度も立ち上がり、ときに侮辱されます。それでもKO負けの経験を持つ自分なりのアドバイスを王者タレクに提案します。真剣なまなざしのスティーブを見て、タレクはそのアドバイスに耳を傾けます。

ボクシングがメインの映画ならば、ボクシングの結果、勝ち負けが重要です。しかしながら、この映画のメインテーマは(おそらく)ボクシングではありません。そのため、重要な局面のボクシングの試合の結果(勝ち負け)は提示されません。

スティーブはこの数年間負けてばかり、お金もそれほど稼げるわけでもなく、ときにはバカにされることもあります。それでも愛するボクシングを離れたくない、その一心で45歳までボクシングの道を一途に歩み続ける、そこに美学があるのかもしれません。

こだわりのポイントは複数存在し、どこに美学を感じるのかはみる人によって変わると思います。

自己投影

スティーブ役のマチュー・カソヴィッツは、いかにも人の良さそうな人柄です(映画「アメリ」のニノ役でも登場しています)。中年男性の多くは、スティーブが殴られ、嘲笑される姿を見て、自分の辛かった日々を思い出したのではないでしょうか。それでもスティーブは、自分の道を貫きましたが、自分はどうだったのか、と改めて考察した人も多いように思います。

自分にとって「美学」を形成する価値観はなんなのか、ということを考えるきっかけを与えてくれる映画でした。

夜、一人で鑑賞しましたが、いろいろと考えてしまい、なかなか眠れませんでした。雷がうるさかったこともありますが・・・。

撮影場所

撮影は、フランス北西部のノルマンディー地域にある湾岸都市ル・アーヴルです。セーヌ川の河口に位置しますが、パリのような雑雑とした華やかさはありません。外国の地方都市です。

パリ セーヌ川

私自身は、フランスは観光で、パリとモンサンミッシェルにのみ行ったことがありますが、ル・アーヴルのような普通の都市があるのだなあと、感じました。

スティーブの所属するジムが、(私の想像する)東京下町のジムとほぼ同じだったことに驚きました。ボクシングは国が違っても、求める人と環境はあまり変わらないようです。

最近は、志麻さんのフランス家庭料理に挑戦することが何度かありましたので、スティーブの家庭でもチーズ入りポテトガレットを作ったりしているのかな?、などと想像してみました!