Yahoo知恵袋に投稿されたネタが、ichidaさんによってマンガとなり、更にはそれが映画になった作品です。結婚3年目の夫婦、サラリーマンの加賀美じゅんが帰宅すると、妻のちえが死んだふりをしていました。
なぜ、死んだふり?
「夫のじゅんはバツイチ。じゅんが仕事を終えて帰宅すると、玄関でちえが口から血を流して倒れていました!動揺するじゅんですが、「ククク……」と笑うちえの傍らにはケチャップがあります。それからというもの、家に帰ると必ず死んだふりをするようになりました。」
ストーリーの前半は、なぜ死んだふりをするのか?という疑問が沸き上がりますが、その設定がいろいろと変化に富んでおり、退屈しません。演技のために小道具が出てきますが、Yahoo知恵袋の「実在の夫婦」はどれくらい凝ったのだろうかと想像が膨らみます。ちえの口数が少なく、ややなぞに包まれています。ちえ役の榮倉奈々さんの演技は不自然なところがなく、とても好感が持てました。
「月が綺麗ですね」の意味は?
じゅんがちえに何度か質問します。自分のことをどう思っているのか、と。するとちえが「月が綺麗ですね」と答えます。
この意味は夏目漱石が「月が綺麗ですね」は英語の”I love you”の和訳として提案した言葉です。私は最近、ドラマ「おっさんずラブ」の中で、この由来を知りました。
この映画のreviewの一つに「「月が綺麗ですね」の意味を理解しないで映画が進んでいくことに驚いた。それなりの年齢でこの言葉の意味を知らないのは、日本人としてあまりに教養不足だと思う」とありました。キビシイ・・・。
高校生の娘 ころ によると、高校の教材「国語便覧」にこの言葉が紹介されているようです。奥さんも娘も知っていましたが、私は知りませんでした。一般教養とは何かの定義にもよりますが、夏目漱石の”本筋”は小説であって、この知識は”本筋ではない”ので、教養不足で驚かれるほどではないと、、、信じています。
”死”と隣合わせの”生”
この映画における「死んだふり」は何を意味するのかという疑問にぶつかります。
主人公が過去の経験から、”生を充実させる”のは”死を意識する”ことが重要と思っているエピソードがあります。「死んだふり」をして死を意識することによって充実した”生”への道筋が生まれる、というのがこの映画のメインテーマかと解釈しました(違うかもしれません)。
分かりやすい例では、スイカを食べるときに”塩”を少々かけると、より甘く感じることと同じです。対比するものを少しだけ横に置いておくと、その特徴が大きく際立ちます。