映画「妖怪人間ベム」2012年 ~醜い体に正義の心~

映画から学ぶ

子供のころに熱中したアニメ「妖怪人間ベム」実写版の映画です。醜い体に正義の心を持って生まれたベム、ベラ、ベロは、「名前の無い男」との戦いで、「人間になること」よりも「人間を守って生きていくこと」を選び、あてのない旅に出ていました。

アニメ「妖怪人間ベム」

アニメ「妖怪人間ベム」(足立明さん原作)は1968年に開始となりました。オープニングのインパクトが半端ないです。「それは、いつ生まれたのか誰も知らない。暗い音の無い世界で、ひとつの細胞が分かれて増えていき、3つの生き物が生まれた。彼らは勿論人間ではない。また、動物でもない。だが、その醜い身体の中には正義の血が隠されているのだ。その生き物、それは、人間になれなかった妖怪人間である」。しびれます。時には人々に迫害され、また時には友情を育みながら、いつか人間になれる日を夢見て彼らは世に仇なす悪と戦い続けます。

子供のころに、どれくらい人助けをしたら人間になれるのかな~、と純粋に疑問に思ったこと、身近なところに妖怪人間がいるのではないかと探したこと、を思い出しました。

新薬開発の犠牲者

「怪異な姿に正義の心を持つ妖怪人間のベム、ベラ、ベロは、たどり着いた街で連続して不可解な事件に遭遇します。事件の謎を追う中、ベロはMPL製薬の新薬開発研究者の娘みちると出会い、恋心を抱きます。」

ベロの淡い恋物語も、このアニメの定番です。アニメの良い部分もちゃんと継承されています!

感想 ~人間の愚かさ~

製薬会社の社長が、ベムに向かって「人類のためには多少の犠牲はかまわない」という内容を何度か言いますが、これは原作が書かれた高度成長期を反映している印象でした。現代ではあからさまに言葉にするトップはいないように感じました。ただ、言葉にしない分巧妙な手口でより陰湿だったりするときもありそうですが。

「表に出た悪よりは、隠れた悪の方がタチが悪い」と良く言われます。そう考えると、現代のいろいろと隠された悪の方がタチが悪いのかもしれません。でも古い時代にも隠れた悪はありそうで、その存在は現在ではよくわからないだけなのかもしれません。

ベム・ベラ・ベロが、悪人を救うことの葛藤、目の前の人間を救うために自分が悪者になることへの躊躇のなさ、アニメではありますが、本当のヒーローをみているようで、心に温かいものを感じます。人間の愚かさと妖怪の人間性の対比が上手に描かれています。

機微考察 ~指の数~

ベロ役の鈴木福さんは、2004年生まれなので、撮影時は8歳です。にこにこした笑顔が素敵でした。「マルモのおきて」で出演しているときよりも演技が自然で、1年でこんなに成長したんだなあと、感心しました。

妖怪人間の指の数は、3本ですが、映画では5本でした。ここはアニメの中では(個人的には)指の本数は重要なポイントです。なんらかの工夫はほしいと感じましたが、細かい点は見なかったことにします。

亀梨和也さんのベムより、柄本明さんの妖怪の方が、無敵な雰囲気がありアニメの中のベムにフィットしています。ちょっと違和感が残りました。演技は良かったので、このアンマッチを楽しめるということもできそうです。アニメを知らなければかっこいいお父さんという設定で、現代らしいともいえそうです。それ以外の役者さんも最高でした。