映画「泣くな赤鬼」2019年 ~心で繋がった師弟関係~

映画から学ぶ

子供のころに「泣いた赤おに」という絵本を読んだことがあります。人間と仲良くしたい赤おにに、青おにが自分が犠牲になって人間と赤おにを仲介するというお話です。この映画「泣くな赤鬼」は、おそらく童話のような話なのかと思って鑑賞を始めました。

熱血野球コーチ

城南工業野球部監督・小渕隆(堤真一)は、鬼のような熱血指導で“赤鬼先生”と呼ばれ恐れられてました。甲子園出場を目前にしながらも夢に破れ、10年経った今は、野球への情熱をすっかり失っていました。ある日、診察を受けた病院でかつての教え子・斎藤智之(柳楽優弥)と偶然再会します。斎藤は野球の才能は群を抜いていましたが、堪え性がなく、挫折して高校を中退した生徒でした。後日、斎藤は末期がんで余命半年であることを知ります。

若くして、死に至る病気にかかるという設定は、映画とわかっていても切なくなります。斎藤が高校生であったころにはすれ違っていた師弟の心が、病気をきっかけに通い始めます。病気の悪化とともに師弟の絆が深まります。表向きは「野球なんて・・・」と一見そっけない振り(態度?)をする2人が、心の中では大好きな野球で強く結ばれていたのです。見ているものを感動させます。

屋外での活動は素晴らしいです!

医者に余命を聞かない

斎藤智之は、余命半年と宣告されます。余命の話がでてくるといつも思い出す話があります。福島にいた頃に聞いたお坊さんの講演です。この講演の中で「医者に余命を聞いてはいけない」という内容がありました。

患者さんの余命が、半年から2年くらいと予測されたとします。医者が患者に説明するときは、職業柄、いつも最悪の事態を念頭に置きます。つまり、おそらく余命半年と説明します。それ以上余命が伸びたらお互い喜ぶことができるからです。逆に2年と説明して、半年でお亡くなりになったら、心の準備ができていないとクレームが来るかもしれないからです。

医者と患者との信頼関係が強ければ強いほど、医者の言った通りの余命になることが分かっています。人間は「自分が思った通り」の人間になる(ナポレオン・ヒル)からです。実際には2年生きることができた可能性があったのに、余命を聞いたがために半年の人生になる可能性があります。

確かにもったいないですね。

柳楽優弥、変わった!

柳楽優弥という名前を初めて見たのは、「誰も知らない」(2014年)という映画の中です。1988年の巣鴨子供置き去り事件を映画化したものです。14歳だったころの映画で、柳楽優弥さんはきゃしゃな子供でした。その頃は自分は・・、と少し感慨深い気持ちになりました。

でも今回の柳楽さんは病人の役とはいえ立派な大人になり、末期の病人の演技もとてもリアルで大人の役者さんになっています。

俳優さんが成長していく姿を見て、ちょっと嬉しくなると同時に自分も年をとったと自覚しました。でも出演者の時系列と自分の時系列を並べて楽しむことができるのは、年をとった者の特権として前向きにとらえることにしました。