実話に基づいたドイツの映画です。青年サリーは高校生の時に、先天性の病のために網膜剥離となり視力の95%を失います。卒業後、夢であるホテルマンになるために様々なホテルに応募します。
視覚障害と仕事
持ち前の真面目さが買われ、見習い研修生として働くことになります。視力障害のためのハードルを乗り越えます。実技面での失敗はあったものの、知識面が高く評価されます。そして最終試験の結果は・・・。
感想
視覚障害があると、就職先はコールセンターか、マッサージと言われてしまう場面があります。日本でも同じイメージがありますが、ドイツでも全く同じ状況であることに驚きました。
ときどきサリーの視点からの景観が写し出され、視聴者はすぐにサリーに感情移入してしまいます。サリーが落ち込んだときは自分も落ち込み、サリーが嬉しいときは自分も嬉しくなります。最後がハッピーエンドなので、見ている自分もハッピーになれます!
機微考察 ~ヒトの能力~
視力を失ったり、歩行能力を失ったり、現代の社会にはいろいろな障害を持った人がいます。脳の全体の能力は人は障害を持っていても同じ程度と言えます。視力からの入力が少なくなると後頭葉の視覚野は活動性が低下します。すると耳からの聴覚野、鼻からの臭覚野の活動性が容易に上昇し能力が向上します。視覚障害の方の耳がとても研ぎ澄まされていると良く言われます。また、点字を読む能力も優れていると言われています。
「視力障害者では、失われた視力の埋め合わせとして優れた聴力が発達するのだろうか?」という研究があります。幼児期以前(2歳以前)に視力を失った人たちが、5歳以降に視力を失った人たちや正常視力の人たちよりも、優れた聴力が発達したことが証明されました [Gougoux, 2004]。
何か障害を抱えている人は、別の能力が向上しているかもしれないと、前向きに生活してほしいと、と思いますが、そう伝えることはとても難しいと感じています。
文献
Gougoux et al. Pitch discrimination in the early blind. Nature 2004, 430 (6997), 309