「ハンナ・アーレント」(2012)などの社会派映画で知られるドイツの女性映画監督マルガレーテ・フォン・トロッタさんが、初めてコメディに挑戦した作品です。原題は「Forget about Nick」です。女性の生き方、ドイツから見たニューヨーク観がところどころににじみ出て、ドイツ人の友人とニューヨークを旅行した気分も味わえました。
夫に捨てられ、元妻との出会い
マンハッタンの超高級アパートメントで暮らすモデルのジェイドは、デザイナーとして華々しいデビューを企画していました。ところが、スポンサーでもある夫ニックから一方的に離婚を告げられます。
傷心の中、さらに夫の前妻のマリアが転がり込み、「部屋の所有権の半分は自分のものだ」と主張します。同じ男と結婚したこと以外は、ファッションもライフスタイルも性格も、すべてが正反対のジェイドとマリアのプライドとこの先の人生をかけた闘いが幕を開けました。そんな折ジェイドのブランド経営が暗礁に乗りあげます。
夫と別れた妻たちの生き方
ニックは、新しい恋人と一緒に暮らしますが、世代の違いを乗り越えることは難しく、結局別れます。そして寂しくなってジェイドに寄りを戻したいと思います。お金持ちで、もて男だったニックは、年を取ったこともあり、結局は寂しい男になってしまいます。
マリアは強く生きていますが、ニューヨークでの生活は苦労が絶えません。ジェイドは捨てられてズタボロになりますが、最終的には自分を取り戻し、自立した女性として強く生きます。
マリアの娘のアントニオも、カッコよく、「ニューヨークでのお金持ち生活」を捨ててドイツに帰ります。
このような女性がカッコよい映画は、男の監督さんにはうまく演出できないと感じました。
人間にとって幸せな生き方とは?
この映画の奥底には、人間にとって幸せとは何か?と問いかけていて、その答えは理解できる人には理解できる内容になっています。
ありきたりな答えになってしまいますが、「人間の幸せ」は、”事業の成功”でも、”お金”でもありません。もちろん、逆の事業の失敗だったり、貧乏でもありません。それは、”愛する人、大切な人と過ごし時間”、仕事においては”楽しいと思える仕事を続けていられる時間”です。
「事業の成功」は幸せな時間の結果であって、幸せそのものではなく、「お金」は幸せになるために一つの手段であって幸せそのものではありません。ときには相反するさえあります。
この映画は、そんな当たり前のことを、実例を挙げながら、ドイツ人から見たニューヨークをユーモアたっぷりに描いた作品でした。
楽しめました!